ブランディングデザインとは?
その重要性と顧客体験向上の実践法
Oct/04/2023
ブランディングデザインとは、本来顧客体験を向上させためのものです。顧客にブランドを記憶してもらい、好きになってもらい、リピートしてもらうために必要な取り組みの一つが、ブランディングデザインです。 この記事は、経営者やブランドマネジメントに携わる方にむけて、ブランディングデザインが何か、その目的や効果、開発プロセスを詳しく説明します。また、ブランド経営の問題解決の仕方を、企業の成功事例を交えながら、POROROCA独自のブランディングデザインの評価軸を踏まえて解説していきます。最後には、ブランディングデザインに関連する制作サービスの紹介と、ブランディングデザイン関連の知識を深めるための参考文献をご紹介します。
1.
ブランディング
とは? その意味と重要性
ブランディングとブランドの違い
ブランディングデザインの理解には、ブランディングと、ブランドの違いを理解することは重要です。
かつて「ブランド」とは、何かと何かを分けるもの。選別させるものとしての焼印やマークの機能しかありませんでした。しかし、現代の「ブランド」は意味も機能も異なります。もともとの選別的な役割から、人のポジティブな感情を想起させるものになりました。ブランドの構築は、会社が顧客との関係性を深化させるために重要です。ビジネスにおけるブランドとは企業へ商品・サービスにむけて、顧客が抱く信頼感であったり、価値のことを言います。
ブランド = 相手が自分に対して抱く価値
これにより、本来ブランドとは認知する側の心に感じる価値です。この価値とは顧客の主観的であり、その時の気分や他者の評価で変わり得るものです。そのため、このイメージを良好なものに変えていく取り組みがブランディングです。ブランディングとは、相手からポジティブな感情で認知されるための活動と言えます。この活動の目的とは、価値の向上を図ることで「コアなファンをつくる」ことです。
ブランディング
= コアなファンをつくる
ブランディングデザインの概要
ブランディングデザインは、ブランドのコンセプトを視覚的に表現する手法です。形、色、文字などを組み合わせて、顧客の視覚に訴える情報を提供します。ブランディングデザインの目的は、顧客のファン化です。デザインを通じて、認知を上げてブランドの本質を伝えることで、顧客にブランド価値を感じて好きになってもらうことです。それが、成果的に商品・サービスへの購買、サブスクや、何らかのファン化につながっていきます。
ブランディングデザインの目的
= ファンになってもらうこと
ブランディングデザインの視覚情報は、いわばブランドの「容姿」です。人々がブランドに対して持つ第一印象を形成します。これをVI(ビジュアルアイデンティティ)とも言います。VIは、CI(コーポレートアイデンティティ)、そしてBI(ブランドアイデンティティ)と連動することで、その視覚効果が高まり、より記憶に残りやすい情報となっていきます。
人が情報を記憶するためには、感情を喚起することと、情報の一貫性が重要になります。VIはブランドの「身なり」、CIは「言動」、そしてBIは「性格」に相当します。これらの要素は、人々がブランドをどのように感じ、評価するかに直接影響を与えます。
- BI (Brand Identity)
- ・ブランドの性格: ブランドの核となる価値や哲学、エモーション、トーン、声など、ブランドの総体的な印象や性格を形成する要素です。
- CI (Corporate Identity)
- ・ブランドの言葉: これは主に企業のミッション、ビジョン、価値観など、企業の存在意義や方向性を示す要素を指します。
- VI (Visual Identity) ←これがブランディングデザイン。
- ・ブランドの容姿: ブランドの視覚的側面、つまりロゴ、カラースキーム、タイポグラフィなどのデザイン要素です。これらはブランドを一目で識別させるものです。
ブランディングデザイン
ツール事例
ブランディングデザインとは、企業やブランドの象徴となるシンボルマークやロゴデザインを中心としたブランド関連の視覚情報です。以下に代表的なブランディングデザインの事例をご紹介します。
- ●シンボルマーク
- ●ロゴタイプ
- ●webサイト
- ●名刺・営業ツール
- ●パンフレット
- ●会社案内
- ●各種広告
- ●カタログ・パンフレット
- ●店舗・空間デザイン
- ●商品パッケージ
- ●ブランドムービー
- ●ブランドブック
- ●企業郵送物(封筒・招待状)
- ●SNSアカウント
- ●zoom背景
- ●見積・請求・納品書
- ●ユニフォーム
- etc.
ブランディングデザインは企業と顧客の接点になります。そのため、こうした視覚情報に直接的にブランドのイメージに影響を与えるため重要です。これは顧客がブランドに対する好みや理解を形成するイメージの基盤となります。視覚的要素を画一的なルールで設計することで、顧客はブランドを直感的に把握して、記憶することができます。
2.
ブランディングデザインの目的と価値
[目的 1] 競合ブランドと識別させる
自社ブランドと他社ブランドを識別する機能は、ブランディングデザインの最も基本的な役割です。主な差別化のポイントとしては、以下のように差別化のポイントは様々あります。
- BI:
- ブランドコンセプト、ブランドキャラクター、ブランドカラー、ブランドキービジュアル etc.
- CI:
- メッセージ、社名、商品・サービス名 etc.
- VI:
- シンボルマーク、ロゴタイプ、webサイト、商品パッケージ、商品コンテンツ etc.
- 事例 A:
- ブランドA社は、ブランドB社の20代向けのスキンケア商品ブランドのコンセプトから差別化をはかり、30代向けにエイジングスキンケアのコンセプトを立案します。
- 事例 B:
- スタートアップA社は、ベンチマークのB社のブランドカラーの青色と差別化を図り、コーポレートシンボルマークを赤色にします。
[目的 2] 企業ブランドの想いを伝える
企業のブランドコンセプトはしばしば抽象的な言葉で構成されますが、これらのコンセプトを形にするのはブランディングデザインの一つの核心的役割です。これは非常に難しいとされ、ブランディングデザインの中でも最も挑戦的な部分です。
ブランドコンセプトを具体化する際、企業のブランドのビジョン、歴史、商品の内容、顧客の興味の対象などを、色や形、視覚情報の組み合わせとして、ブランドの象徴として、ブランディングデザインで視覚化する必要があります。
[目的 3] ブランドの一貫性を保ち、情報を記憶させる
記憶に残る情報とは、様々なメディアにまたがって送られる情報に、一貫性を感じられるものです。そのため、ブランディングデザインは顧客目線で、アクセスポイントとなる媒体を踏まえてつくることが重要です。
例えば、ロゴ制作においては、ブランドや商品・サービスコンセプトをベースに、すべての媒体で同じコンセプトで情報配信やビジュアル展開を行うことで、視覚情報の一貫性が保て、記憶されやすくなります。
[目的 4] 顧客に共感を届ける
顧客視点や市場ニーズやトレンドを踏まえて作られるブランディングデザインは、顧客から共感されやすくなります。そのため、ブランドマネジメントはブランディングデザインを制作する前に、市場や顧客へのニーズリサーチを行い、顧客理解を深めることが欠かせません。
3.
ブランディングデザイン開発のプロセス
ブランドコンセプトの開発
ブランディングデザインは、ブランドコンセプトを可視化したものです。そのため、ブランドコンセプトはロゴやウェブサイトや広告などのブランディングデザインに展開する前に開発するものです。ブランドコンセプトの開発は以下のステップで、ブランドの個性となるキャラクターや顧客への提供価値を明確にしていきます。
1. ブランドビジョンとミッションの定義
ブランドが達成したい目標(ブランドビジョン)と、そのために行う具体的な活動(ミッション)を明確にします。
2. ターゲットオーディエンスの特定
ブランドがどのような顧客層に向けられているのかを定め、そのニーズや期待に応えるための方向性を決定します。そのため、顧客ニーズを事前に理解するためのリサーチを行なっておく必要はあります。
3. ブランドエクイティ(ブランドの価値)とパーソナリティの確立
ブランドが提供する価値(品質、信頼性、感動など)やブランドの個性(親しみやすさ、革新性など)を具体化します。
4. 市場と競合の分析
ブランドが市場でどのように位置付けられるべきか、競合他社との差別化ポイントを明確にします。
シンボルマーク・ロゴタイプの開発とブランドカラーの選定
視覚的なアイデンティティを形成するシンボルマークやロゴタイプ、ブランドカラーは、ブランド認知を高めるために欠かせません。
1. シンボルマーク・ロゴタイプのデザインの開発
ブランドの核心を象徴するシンボルマークとロゴタイプをデザインします。これはブランディングデザインの中核となる非常に重要な開発です。
2. ブランドカラーの選定
ブランドを連想させるカラーを選びます。心理的な影響や視覚的なインパクト、競合他社のブランドカラーとの差別化を考慮していきます。
3. ブランディングデザインクオリティー(BDQ)による評価
このプロセスにおいて、POROROCAでは独自の評価軸を入れて開発中のシンボルマークとロゴタイプに客観的評価を入れて検証を行います。担当者の主観や好みで決まる傾向のあるシンボルマークとロゴタイプにおいて、BDQは以下の問題の解決を図ります。
- ・ブランドの本質を伝えるか(独自性)
- ・競合他社との差別化されているか(差別性)
- ・様々な媒体で適用可能な展開力があるか(展開性)
- ・形状や配色がブランドの本質を想起させるか(連想性)
- ・イメージ刷新によるブランドイメージの毀損はないか(継続性)
- ・様々な媒体展開で視覚的統一を図れるか(画一性)
詳しくはこちらから。→ ブランディングデザインクオリティー(BDQ)
ブランドキービジュアルの開発
ブランドキービジュアルとは、ブランドのメッセージや価値を視覚的に伝えるためのビジュアル要素です。これはシンボルマークとロゴタイプの社名に関連したアイデンティティとは異なり、平面デザインやイラスト・写真や映像の編集・デザインを通じて、そのブランドの世界観や提供価値を伝えるブランドイメージです。
1. キービジュアル開発
ブランドコンセプトに従って、ビジュアルを開発します。これには、写真やイラスト、映像表現においてブランド価値を伝えるスタイルや色調、パターンを含んでいきます。
2. メディア展開
キービジュアルを展開する媒体に応じて調整していきます。ウェブサイト、広告、SNSなど、各メディアに適した形やサイズ、内容に変更していきます。ここでは変更による一貫性の欠如に注意します。
顧客ニーズを組んだブランドコンセプトと、それを踏まえたシンボルマーク、ロゴタイプに、キービジュアルを連動させながら、様々な媒体でブランドイメージを展開することで、効果的なブランディングデザインが完成します。効果的なブランディングデザインは、認知を高める力になり、それがブランドの価値を上げていくことにつながります。
4.
ブランディングデザインの問題とその向き合い方
[問題 1] ブランドの特徴と魅力が伝わらない(独自性)
ブランドの独自性とは、ニーズがあり、他社にはない特徴のことを指します。どんなに際立っていても、競合が多い場合はその特徴が目立たなくなります。また、ニーズがないものは、たとえ際立った特徴であってもリソースの無駄になりがちです。ブランディングデザインでは、このような独自性が明確で、相対的に目立つほど、より強力なデザインイメージを作り上げ、認知度を底上げすることが可能です。
[問題 2] 競合ブランドとの混同される(差別性)
競合他社とブランドイメージが類似している場合、差別化が必要です。差別化は相対的なものであり、他社と比較した自社の特徴の違いを表現することを指します。差別化を行うと、ブランドの認知度は向上しやすくなります。この問題に取り組むには、関連する競合他社ブランドや商品ブランドへの特定の視点と、市場を広く捉えた俯瞰的な視点の両方から、自社のブランドを際立たせる形を見極めることが重要です。差別化はこのようなアプローチによって実現可能です。
[問題 3] 媒体次第でブランドイメージの伝わり方が変わる(展開性)
ブランディングデザインは、様々な媒体に展開する際にも、一貫したブランドコンセプトとイメージを伝える必要があります。例えば、適応性の低いシンボルマークやロゴタイプは、媒体次第で視認性が大幅に低下することがあります。そのため、ブランディングデザインの視認性が維持するためには、各媒体のスペースや規定に対応できるシンボルマークやロゴタイプが必要です。
[問題 4] ブランドイメージを誤解される(連想性)
ブランドイメージはブランディングデザインによって伝わり方が変わります。同じコンセプトでも、デザインによっては、本質を捉えた情報として伝わることもあれば、誤解を招くこともあります。誤解を防ぐためには、ブランドコンセプトへの深い理解と、顧客視点が必要です。これに加えて、デザイナーにはブランドの本質を形に色に置き換える力が求められます。
[問題 5] ブランドイメージが現代的でない(継続性)
ブランドイメージは時間とともに進化させる必要があります。顧客のニーズや市場のトレンドに合わせて、ブランディングデザインを定期的に見直すことが重要です。多くの企業は、時代に合った新しいデザインを採用することで、ブランドの魅力を維持しています。逆に、デザインを更新しない場合、ブランドは古臭く感じられ、その結果、ブランドの訴求力が低下し、顧客の関心やエンゲージメントも減少してしまいます。
[問題 6] ブランドイメージが統一されていない(画一性)
ブランド情報は様々な媒体に展開されます。媒体先でブランドイメージが統一されていない場合、顧客への情報の伝達効率は低下し、認知されにくくなります。そのため、デザイナーやブランドマネジメント側は、すべての媒体において、同じブランドコンセプトとレギュレーションに沿った、画一的なブランド情報の発信が重要になります。
5.
ブランディングデザインの成功事例
ブランディングデザインの成功事例を、上記の6つ問題から、それぞれの視点で紹介していきます。
[独自性]の観点からの成功事例|GO株式会社
- ポイント
- GO株式会社は、モビリティ産業に特化したスタートアップで、商号変更とともにVI(ビジュアルアイデンティティ)も一新しました。この新しいVIは、企業の「移動」に対する独自のビジョンをロゴタイプだけでなく、称号、キャッチコピーや広告デザインにも反映しています。この統一性が、ユーザーに対して企業が提供する便益を直感的に理解させる力を持っています。特に、GOの「O」が地球を連想させるデザインは、企業がグローバルな拡大を目指していると感じさせる効果があります。
[画一性]の観点からの成功事例|一橋ビジネススクール
- ポイント
- 一橋ビジネススクール(HUB)は、一橋大学の主導で運営される社会人向けの教育機関です。そのブランディングデザインは、大学の歴史と伝統を尊重したロゴタイプを採用しています。このロゴは、紙媒体からデジタル媒体まで、一貫した規則性で展開されており、これによってブランド情報の伝達効率が向上しています。
さらに、VI(ビジュアルアイデンティティ)では、多くのシグニチャー(シンボルとロゴの組み合わせ)を作成しています。このシグニチャーは、媒体によらず1つ、最大で2つのパターンに限定されています。これは、ブランドの統一感を高め、記憶に残りやすくするための戦略です。
[展開性]の観点からの成功事例|ユニクロ
- ポイント
- 正方形型のロゴは、多様なメディアとスペース制約に柔軟に対応できるため、展開性が高いです。この形状は、縦長や横長のロゴが視認性を失いがちなレイアウトでも、その問題を解決します。また、この比率を活かした斬新なVIや看板の設計は賞賛に値します。さらに、グローバル企業であるため、英文と和文のロゴを並列に配置するという独特の手法を用いて、「日本発信」を海外でも感じさせる工夫がされています。
[差別性]の観点からの成功事例|Loft
- ポイント
- 店舗の看板やブランドカラーは、公共の場での視認性と識別性に大きく影響します。例えば、ロフトは黄色のロゴカラーを採用しており、これは市場の主な競合である東急ハンズの緑、無印のえんじ、PLAZAの青とは異なります。この選択は主に「識別」を目的としています。ロゴの入った袋を持ち歩くだけでも、それが広告となるためです。また、ロフトのロゴは黄色と黒の組み合わせで、非常に強い視認性を持っています。この色の組み合わせは、色コントラストでは白と黒に劣るものの、例えばインフラ上の注意喚起の標識などで採用されているものと同じ組み合わせで、視認性では優れています。
[継続性]の観点からの成功事例|Starbucks
- ポイント
- VI(ビジュアルアイデンティティ)における継続性は、ブランドのロゴやシンボルが時間を経ても引き継がれやすいかどうかを示す指標です。特有のモチーフやキャラクターを用いると、この継続性は高 まります。例えば、スターバックスは創業以来4回のデザイン変更を行っていますが、基本的なモチーフであるギリシャ神話の「サイレン」は維持しています。これは、ブランドの識別性を保ち、業績に悪影響を与えないようにするためです。モチーフが一貫していると、消費者に「同じブランド」として認識されやすく、その継続性が保たれます。
[連想性]の観点からの成功事例|SUS
- ポイント
- SUSというメタバース事業やIT人材派遣を行う企業のVI(ビジュアルアイデンティティ)展開は、POROROCAがディレクションを担当しました。このシンボルマークは、仮想空間のデジタルキューブを連想させ、その結果、ブランドの特徴をうまく「連想させる」効果があります。
このような抽象的なブランドコンセプトをシンプルな図形、特にヘキサゴンに落とし込むのは容易ではありません。さらに、その中に社名も組み込むという匠の技が見られます。また、3D的な表現は「空間」を感じさせる効果もあり、ブランドの多次元的な側面を表現しています。
6.
ブランディングデザイン制作案内と参考文献
◎ ブランディングデザインクオリティー(BDQ)
以上の6つの問題と成功事例に関して、POROROCA独自の解決フレームワークとその効果を、以下のリンクより詳しく説明しています。
→ ブランディングデザインクオリティー(BDQ)
◎ ブランディングデザインの制作サービスのご案内
この章で紹介した6つの問題を解決しながら、顧客の視点からBI CI VIや、シンボルマーク、ロゴタイプを中心にしたブランディングデザインの制作をいたします。
→ POROROCAの3つの強み
◎ 参考文献
ブランディングデザインの中核となるロゴデザインの作例や、ロゴのアイデアの出し方について、以下の書籍にて、POROROCAの実績掲載やコラム寄稿をさせていただいています。加えて代表の奥野がブランディングデザイン制作における、デザイン思考の使い方の紹介をしている書籍が発刊されます。ブランディングデザイン制作のヒントがつまっています。